牛乳とガンの関係
2008年4月、厚生労働省の研究班によって牛乳やヨーグルトなどの乳製品の摂取量が多い人ほど前立腺がんの発症率が高くなるという、なんとも衝撃的な調査結果が発表されました。
また海外では、前立腺がんのほかにも、乳がんや卵巣がんなど、性ホルモンが関連したガンと乳製品との関連性が多くの研究によって指摘されています。
海外の膨大なデータとハーバード大学の2つの大規模な研究では、牛乳を日頃飲んでいる男性は前立腺がんのリスクが有意に高いことを示しています。
ではなぜ、牛乳がガンの発症につながるのでしょう。
その原因には、牛乳中の「さまざまなホルモン」が関係しています。
哺乳類の子どもは、生まれてから離乳するまでの短期間、母親のミルクだけを飲んで育ちます。ウシの子は母ウシのミルク(牛乳)を飲み、人間の子は母親のミルク(母乳)を飲むのです。牛乳も母乳も、たんぱく質・脂質・糖質・ビタミン・ミネラルという栄養素を含む単なる白い液体だけではなく、生まれたばかりの子どもの成長を促す成長因子やホルモンを含む強力な生化学的液体なのです。
牛乳はもともと、子牛が成長するためのものです。子牛は1日1kgも体重が増えるほどに成長が早く、人間の赤ちゃんとは比べものにならないほど猛烈なスピードで大きくなっていきます。
その急激な成長に必要な因子となる多種多様な生理活性物質が、牛乳には極めて高濃度で含まれているのです。
しかも、アメリカなどでは牛乳の生産効率アップを目的に、人工的な成長ホルモンを乳牛に投与しているため、結果として牛乳中のホルモン類の濃度はさらに高まっています。
ちなみに、日本はアメリカから大量の乳製品を輸入し、加工食品などに用いています。
さてでは、子牛の急成長に必要な、「ホルモン濃縮液」を人間が飲むとどうなるでしょう?
実はその「ホルモン濃縮液」を人間が飲むと、それによって、身体のさまざまな部位の「成長」が極度に促進されるのです。
その影響は特に、前立腺や乳房などの性ホルモンの関わりの強い組織にでやすく、そこで生じてしまったガン細胞の増殖をどんどん後押ししてしまっているといわれているのです。
乳製品をやめて乳ガンを克服
イギリスのジェイン・プラント教授は、著書の「乳がんと牛乳」で自己の体験や乳がんの原因、乳がん予防の食事など詳しく述べています。
プラント教授は、1987年に42歳で乳がんになり、乳房切除、その後4回の乳がん再発を経験し、放射線治療、抗がん剤治療を受けました。彼女は、乳がんで死なないために、科学者としての経験・知識を総動員して、なぜ自分が乳がんになったかを省察しました。
その結果、乳がんは乳製品によって起こるという結論に達したそうです。
プラント教授が、乳がんの再発を避けるために「乳・乳製品を完全に避ける」という食事を実践したのは1993年で、鎖骨上リンパ節に転移した乳がん治療のために、抗がん剤を投与さえているときでした。抗がん剤がまったく効いていないという状況の中、乳製品をまったく避けることで乳がんが次第に小さくなり、消失したのです。
その後現在にいたるまで10数年完全に乳がんフリーで活躍しています。
おどろきですよね。
プラント教授が、このことに気づくきっかけになったのは、「中華人民共和国におけるガン死亡率図譜」見ていて、中国全域を通じて乳がんが驚くほど少ないということを発見した時からでした。中国全体の乳がん死亡率は1万人にたった1人だったのです。この死亡率は多くの西欧諸国における10人に1人という数字にくらべてきわめて低いものでした。
それから、プラント教授は「中国人は乳製品を食べない!」ということに気がついたのです。中国人は「ミルクは子供が飲むものだ」と一切乳製品を口にしないようなのです。
乳がんと前立腺がんの発生率は西洋と東洋で大きく異なります。どうしてこんなに違うのでしょう。それは遺伝の違いによるものではありません。移民研究によれば、中国人や日本人が西洋に移住すると、1~2世代のうちに乳がんや前立腺がんの発生率と死亡率が西洋人と変わらなくなってしまうそうです。
中国での乳がんは、俗に「富貴婦病=金持ち女の病気」と呼ばれているそうです。これは、開放経済前の中国では、金持ちだけが「香港食」を手に入れることができたからです。そのころの中国人は、アイスクリームやチョコレート、スパゲッティ、フェタチーズ(山羊や羊のチーズ)まで西洋風の食品をすべて「香港食」と呼んでいました。というのも、これらの食品は当時イギリスの植民地であった香港でしか手に入らなかったからです。
この西洋風の食品を摂っている人が乳がんになっていたということなのですね。
疫学研究でも、乳がんと乳製品の関係は20年以上も前から報告されていたようです。
1970年には、脂肪の摂取量が多くても乳製品の摂取量が少ない地域では乳がんの死亡が少ないという研究が報告されており、乳・乳製品が多くなると、女性の乳がんリスクが高くなるという研究もあります。
日本でも脂肪摂取量が少ないのに、乳・乳製品の摂取量が多くなるにしたがって乳がんの発生率が高くなっているのです。
日本とアメリカで乳がんの罹患率をくらべてみると、アメリカ人女性が日本人女性にくらべて圧倒的に乳がんになりやすいのがわかります。
これはプラント教授が述べているように、食生活の違いなのです。アメリカにあって、日本になかったものは牛乳・乳製品です。もちろん日本人も牛乳・乳製品を摂りますが、一般の日本人が牛乳を飲むようになったのは敗戦後にすぎません。
国連食糧農業機関(FAO)のデータでは、1961年~1997年の乳製品の平均1日あたりの消費量は日本が141g、アメリカが673gで、アメリカの消費量は日本の約4.8倍になっています。
しかし、昨今の日本では乳がんが急激に増えています。
1965年に1966人であった乳がん死亡は、2005年には1万721人になり、現在では毎年、1万人以上の女性が乳がんで死亡する時代になっています。
なぜなのでしょう。
もうみなさんもおわかりかと思いますが、食生活が変わったからなのです。
日本人が味噌、醤油、鰹節、昆布などの風味の和食から、バターやクリームの香りのする洋食に接する機会が多くなったからなのです。要は、牛乳・バター・クリーム・ヨーグルトなどの乳製品を口にするようなったからともいえます。
プラント教授は、40代のキャリア女性に乳がんが多い理由を、調理に費やす時間をけずって仕事に全力投入するためと述べています。というのは、低脂肪牛乳、カッテージ・チーズ、ヨーグルト、ハンバーグ(乳牛の肉)などを多用するというのです。
日本の場合でも、社会で活躍する女性は、朝食をパン(食パンは、小麦粉とイースト以外にバターと牛乳を含んでいる)とバターあるいはヨーグルト、コーヒー・紅茶ですませ、間食にアイスクリームやケーキなどの甘い、バターの香りのするものを食べるなど、乳製品を摂らない日はないのでないでしょうか。
(Jane Plant Your Life In Your Hands 引用)
みなさんの中にも思い当たる人はいるでしょう。
たしかにヘビースモーカーのすべてが肺がんになるわけではないのと同じ理由で、牛乳・乳製品を好んで口にする人がすべて乳がんになるわけではありません。しかし、集団レベルでみれば、明らかに牛乳・乳製品を多飲・多食する国々に乳がんが多いのです。
牛乳はホルモンカクテル
乳房の大きさ、重さ、感じやすさ、さらにはその健康状態は、血液中を流れている微量の生理化学物質「ホルモン」の影響を受けています。
思春期には、成長ホルモンがインスリン様成長因子1(IGF-1)の分泌を促し、その刺激によって乳房が大きくなります。また妊娠すると胎盤からもホルモンが分泌され、出産後の乳児の保育に備えて乳腺が発達します。
科学的な情報メッセンジャーであるホルモンには、哺乳動物のあいだで共通点が多いといいます。ホルモンは、循環血液中に存在して身体のいろいろな部位に情報を伝達します。したがって、ホルモンのごくわずかな濃度変化によって、身体は非常に大きく影響を受けるのです。
みなさん御存じのように出産すると、母乳が分泌されます。母乳はビタミン・ミネラルなどの栄養素をたくさん含む健康的な飲み物という以外に、新生児の特定の部位に働いてその部分の成長と発達を促すために、たくさんのホルモンやホルモン様物質を高濃度に含んでいる液体「ホルモンカクテル」なのです。
実際、母乳を飲むことによって新生児の細胞分裂が促進されるのです。
このため、古来、母乳は「白い血液」とも呼ばれてきました。
母乳に含まれているものをあげると・・・
プロラクチン、オキシトシン、副腎と卵巣のステロイドホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出因子、インスリン、ソマトスタチン、リラキシン、カルシトニン、ニューロテンシン、プロスタグランジン、甲状腺刺激ホルモン、甲状腺ホルモン、エリスロポイエチン、ボンベシンなど・・・
本当に多数のホルモンが含まれています。
さらには、上皮増殖因子、インスリン様成長因子1(IGF-1)、神経発育因子などの成長因子も含んでおり、乳児の免疫機能に関与するような40種類以上もの酵素もあります。
すごい数ですよね。
つまり、母乳には、それが人間のもの(母乳)であれウシのもの(牛乳)であれ、親から新生児に伝えるべき数百種類の化学物質が含まれているのです。
そしてこの中でも特に「乳がん」に関わっているのが、インスリン様成長因子(IGF-1)です。
インスリン様成長因子(IGF-1)とはインスリンと同じような働きをもつ成長因子という意味で、インスリンとIGF-1は、ともに細胞を大きくする作用があります。
インスリンの主な作用は、血液中に余分にある栄養分を細胞内に蓄えるという単純なものですが、IGF-1は細胞の分裂と増殖を起こし、その作用は細胞の分裂増殖が盛んな時(乳児期や思春期。成人ではがんの増殖)に発揮されるという特徴があります。
ウシ成長ホルモン(BGH)とヒト成長ホルモン(HGH)は構造が違うのですが、インスリン様成長因子(IGF-1)は、ウシでもヒトでも同じです。
問題となるのは、ミルク中のIGF-1濃度が、母乳より牛乳の方が断然高いということです。
さらに牛乳の生産をあげるために用いられる組み換えウシ成長ホルモン(rBGH)を与えられた乳牛の出すミルク中のIGF-1は普通の牛乳より2~5倍も高く、その乳牛の肉のIGF-1は普通の乳牛の肉の2倍ほど高くなってしまうといいます。
IGF-1は、牛乳を63度で30分加熱するという滅菌方法では壊れません。
また牛乳にはたんぱく質としてカゼインが含まれているために、牛乳のIGF-1はヒトの消化管内で分解されないともいわれています。
思春期になって女の子の乳房が膨らむのは、IGF-1の細胞分裂促進作用が働いているからです。
ということ、IGF-1が高くなっている牛乳・乳製品・乳牛肉が、乳がん細胞の分裂を促し、乳がんの成長を促すのではないかという疑問が湧いてきませんか?
1998年にスーザン・ハンキンスン博士に率いられたアメリカとカナダの研究チームは、更年期前の女性を調べて、血中のIGF-1濃度がもっとも高い女性はもっとも低い女性にくらべて乳がんになるリスクが3倍高いという結果を発表しています。
またマギル大学とハーバード大学の研究者は、血液中のIGF-1濃度が前立腺がんの発生とも関係が深いという研究結果を発表しています。この報告によると、IGF-1濃度がもっとも高い男性は、もっとも低い男性にくらべて前立腺がんのリスクが4.6倍でした。それまでは、前立腺がんの要因としてテストステロンなどの男性ホルモンが注目されていましたが、今ではIGF-1がより重要なリスク要因として脚光をあびているのです。
そのほか1996年にはイリノイ大学のエプスタイン博士が、組み換えウシ成長ホルモン(rBGH)を注射した乳牛から搾った牛乳を飲むと、血液中のIGF-1が増えて乳がんと大腸がんの発生が増えるという研究発表を報告しています。EUでは1995年にこの組み換えウシ成長ホルモン(rBGH)を圏内の牛乳生産に用いることを禁止しています。
IGF-1は、新生児や乳児の成長に欠かせない生理活性物質です。
しかし、本来必要としない大人がこの物質を体内にとりこむようになって、いろいろな問題が現れ始めたとも言えます.
乳がんと前立腺がんの発生にもっとも大きな影響を与えるのはIGF-1と言われていますが、子牛の急速な成長を支える牛乳には、その他にも大量の成長因子とホルモンが含まれています。エストロゲンもその一つでしょう。
このような強力な液体を成人が飲むと、体内に潜んでいるガン細胞の分裂・増殖を刺激してガンの成長を促し、乳がんの治療を受けた人にもガンの再発をもたらすことになってしまうかもしれないのです。
少し長くなりましたが、いかがでしたか?
牛乳は注意しないと問題を起こす可能性が高い食材だということ、またこれからさらなる研究で様々なことがわかってくると良いですね^^。
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